ホテルの窓から外を見ると、曇った空と鹿児島市内が見えた。風が窓をたたく音が微かに聞こえた。外はとても寒そうに感じる。
　ぼくは鹿児島は冬でも暖かいだろうと思っていたが、昨夜の鹿児島は底冷えするような寒さだった。天文館の繁華街を歩いていると冷たい風で耳が痛くなった。佐多岬は確かに暖かかったが鹿児島市内は結構冷える。
　さて今日はどこへ行こう。昨夜ルートを検証しようかと思ったが、妙に感傷的になって何も決めないまま眠ってしまった。
　テレビの天気予報では、鹿児島県、熊本県は曇りのち雨とのこと。ホテルのレストランで朝食を取りながら、九州ガイドブックを広げて今日の行程を検討する。天草列島へ行こうかとも考えたが距離的に結構ある。とりあえず九州自動車道を使い熊本を目指すことにした。そこから大分へ行くのか、佐賀へ行くのかまようところだが、走りながら決めよう。

　ホテルを出発したのは午前9時頃だったと思う。空はうす曇。風も予想通り冷たく、オープンにして走る気がしなかった。朝決めたとおり鹿児島から九州自動車道を使う。2車線のとても空いている高速道路だ。途中櫻島サービスエリアで休憩を取った。
　空は今にも泣き出しそうな気配だ。熊本までおよそ2時間。お昼頃には熊本市に到着した。さてこれからどうしよう。ぼくはやはり九州の象徴である阿蘇山を見てみたくなった。ちょっと天候が悪いが、阿蘇山へ向かうことにした。
　阿蘇山へ向かう前に熊本でしばらく休憩である。国道沿いに大きなパチンコ屋が目立つ。そのうちの一軒に入り、さっそくスロットをやり始める。九州初めてのスロットである。ハクション大魔王で2万負け。その後やけになりいろいろな機種を打ち、トータル4万くらいまけただろうか。懐が一気に寂しくなった。精神的にもかなりのダメージを受けた。このところスロットでは絶好調だったのに。熱くなりすぎた。
　はっときがつくともう16時を過ぎていた。おおっなんということだろう。今日は阿蘇山を見に行くんじゃなかったのか。ぼくは何故かパチ屋で4時間も過ごして4万も負けてしまって、泣き出したい気持ちをこらえながらビートに乗り込んだ。もう空は薄暗くなりかけていた。ぼくの気持ちはますます暗くなった。

-　九州自動車道 -
道は空いていた

- 阿蘇山へ -
やまなみハイウェイ

 
- 阿蘇山頂 -
真っ暗

　それでも阿蘇山に向かい暮れかかる山道をオープンで走る。くねくねした国道57号を上っていく。カーブをひとつこえる風は確実に冷たくなっていく。山頂に近づくにつれて道路わきに雪を見かけるようになる。もう外は完全に暗くなった。雪は道路の中にも薄く積もっている。ぼくはタイヤをロックさせないよう細心の注意を払い山道を登っていった。
　30分ほど走ると山頂についた。真っ暗になった阿蘇山頂には観光客の姿は見えなかった。気温は0度以下ではないだろうか。時折ぱらぱらと小雪もちらついてきた。結局時間が遅かったこととこの天候で阿蘇山は良く見えなかった。とにかく阿蘇山頂に行ったんだということに満足して下山した。
　帰りはやまなみハイウェイを大分方面へ向かった。
　宿は大分にある豊の国健康ランドにした。この健康ランドはコンパクトルームという仮眠用の個室があった。3200円支払えばこの個室が利用できた。まずお風呂へ入る。阿蘇山の零下のオープンドライブで冷え切った体をサウナといくつかの温泉で暖める。
　そして食堂でビールである。ぶりの煮付けみたいな料理、もろきゅう、鶏南蛮を頼む。ぶりは相当な量があった。鶏南蛮も大きい。味も美味しい。生2杯。焼酎1杯。大満足して23時ごろ就寝。明日はやまなみハイウェイを思いっきり走ってみたい。晴れてくれればよいのだが。